3.12小節ブルースに於ける全体の構造

つづいて、ブルース全体の形式、それぞれの場所での、動機の扱いの傾向、発展のさせ方をみてみる。

その傾向に「乗って」12小節のブルースの「メロディー」をアドリブで動かすつまりブルースの形式は「こうあらねばならない」という事ではなくて、ブルースの形式自体がもつ動機への影響力を感じる、それを知るという事。

1章では、トニックからサブドミナントへ動機を受け継ぐ事で、すでに動機の操作の最小の単位を動かす事を「経験」した。

2章では、各コードでのマイナー・ペンタトニック各音の「立場」ともいえる、コードとの関係、またマイナー・ペンタトニック各音の方向性を知り、感じた。

あとはその単位が、12小節全体でどう発展、あるいは保留、抑制されるかを感じればよい。

その前に、練習曲を一曲提示する。これは、マイナー・ペンタトニックのみでのライン。後半の2コーラスは、♭5を使っている。つまり、スケールは、マイナー・ペンタトニック・♭5となる。

アドリブは、音が少ない方が歌い難い。なぜなら使える音が少ないという事は制限になるので。

しかし、先ずはマイナー・ペンタトニックの動機の持つ、方向性、重力を感じて欲しい。練習曲は単に可能性を提示するだけなので、この通りに弾く必要は無い。ただ、自然に、ブルースの動機の力を経験すると、こういった傾向がある、という事だけ、音で指摘してみる。

使っているコードは、1ポジション。つまり、最も距離的に近いコード進行。

2章で紹介したとおり、9小節目でドミナントのドミナント(2ndly Dominant7th)である、D7を使っている。

この場合のD7の3度F#が、G♭、つまりブルースのスケールの♭5thに該当するので、ブルースの響きをコード自体でも強く出す。また、ドミナントの前に、ドミナントへ進行するドミナントを持つことで、ブルースのチェンジがかなりジャズの雰囲気に近づき、前進感と、同時にクッション的な転換とを加えることが出来る。響きを、まずコードで確かめてください。パワータブはこちら

         ワン・グリップ・ブルースの練習。マイナー・ペンタトニック

1コーラス目だけ、簡単に動機の操作の内容を指摘してみた。 つまり、1コーラス目は、曲、テーマと考えて、以降のコーラスをアドリブとして、先に進む毎に、「フレーズ」的になってゆく。

1コーラス目:第1小節で提示された動機が、第2小節で引き継がれ、第3、4小節では、上がって下がる山形(やまなり)の形を拡大している。

5小節目からのサブ・ドミナントでも、第1の動機を引き継ぎ、次の小節で、若干の「フック」変化、アテンションを与えている。下降のラインは、あるいは第2の動機として、次の小節に変形して引き継いでいる。 また、第3,4小節で拡大された山形を、7,8小節では反対の方向にしている。音程の上下反対に扱う事を「鏡像」(鏡に映した姿)と呼ぶ。

で、これらは1コーラス目の12小節についての事で、他のコーラスにはやはり12小節様々な動機操作がされている。でも、これはアドリブを譜に起こしたものなので、あくまで結果論として考えてください。


動機の扱いの、全体での見方は図形的に見渡すのが理解するのに早い。

つまり、4小節一段づつだと特に、ブルースの形式で、同じコードが連続する2小節の単位、4小節づつの2段、3段の上下の形の関連にも注目する。

その他、「動機の開始点を変えること(リズム)」「動機全体の音程を変える(形はそのままで)」も動機操作の常套手段となる。 休符の位置にも注目。休符は、発音する音と同じ価値で動機に関わっている。

音数を増やす(3連を入れる事も有効)ことで、動機を変形する事は、特に有効。あるいは、「フレーズ化」の基礎とも言える。

1章で最初に紹介した動機をどう発展させているか弾いて感じて欲しい。また、楽譜の上で、「形」的な変化変形を掴み取る事。

しかし、これらは、「ブルース自らが要求する動機の操作」であって、いちいち考えているわけじゃない。自分で採譜してみてその傾向がよりわかるという事。しかし、その傾向を自覚していれば、よりアドリブにまとまりが出るし、発展性のための仕込みにも有効になる。何よりブルースの形式に限らず、作曲のための素材、手法となる。


上に挙げた練習曲を参考に、12小節ブルースの全体的な構造を見てみる。

これは、ブルースの動機の扱いの基本的な文法といえるもので、必ずしも「こうすべし」というものではない。むしろ、ブルースの形式のもつ「傾向」つまり現象的なものの観察。

これを知った上で、その流れ、つまり今度は、「形式=フォーム」そのものの持つ力、動機への影響力を、感じ、乗るということです。

また、文字で表現すると、難しく見えるかもしれないけれど、「自然とこうなる、なっている」見えない力の流れを整理しているに過ぎないので、経験することで容易に理解出来るでしょう。

つまり、どこの国の人であろうと、ブルースをブルースらしく表現している時、この「力の流れ」が、必ず働いていると考えてよい。


12小節ブルースに於ける全体的な構造

1小節単位の動機の場合。

|第一小節 T (動機の掲示)|
                            
|第二小節 SD (動機の引継ぎ、SDでの動機の可能性の掲示。

       
|第三、四小節 T(第一小節の動機の繰り返しか、動機の展開。あるいは、第一の動機の2小節単位での拡大。第一、二小節での動機に対する返答。比較的自由。)|

|第五、六小節 SD(Tで表出された動機への返答。動機のリズムを保ち、音程でSDのコードを表現する。あるいは、第七、八小節の自由部で展開される動機を先取りし、第二の動機を提示する。)|

|第七、八小節 T(SDへの返答、動機の展開:第九小節への準備息継ぎ:自由部。三、四小節での拡大された動機の変形、応答。)|

|第九小節 SD(II7)。ドミナントへのドミナントとして緊張感へ向かう(転換)|

|第十小節 D(緊張と頂点)|

|第十一、十二小節 T、帰結、解決。同時にターン・アラウンド(伴奏部、次のコーラスへの導入:自由部)つまり、終わりであり次の始まりへの準備。(最終小節で、次のコーラスの動機を掲示、あるいはにおわせる事も出来る)

動機の扱いには、先ず、「最小単位の動機が提示される事」が条件になる。それを、「繰り返す」か、「変形する」か、「拡大するか」か、あるいは、「縮小」つまり、細かい音使いに変える。

そして、最小の動機の単位に対する繰り返し等の操作が行われて、2小節の単位の動機を、2小節の単位で一つのメロディーに対応、変形する事も出来る。

ここは、もう少し解りやすく、図にするなどして、説明する予定です。


起承転結の基本構造と変動するコール・アンド・レスポンス

 |起:承|承:転|転結|
 |転:承|    |   |  
 |    |    |   | 


2小節単位の呼応(コール・アンド・レスポンス)
 |呼:応|応 |応 

4小節単位の呼応
|呼 |||
|応 |||   

呼応と合唱の形式
|呼 |||
|応 |||
|合唱|||

詳しくは後ほど。つづく。

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