A−5 ターン・アラウンドと、同種コードのオクターブ等分割音程進行によるリハモニゼーション

A−5−A.ターン・アラウンド

ターン・アラウンドとは、ブルースに限らず、1コーラスが終わり、「繰り返される」際の、最後の数小節(2小節が多い)の内容を指す。

ブルースのフォームだと、

I7 | IV7 | I7 | I7 |
IV7| IV7 | I7 | I7 |
V7 | IV7 | I7 | I7 :||

これを基本フォームとすると、最後の11,12小節がターンアラウンド内容は、トニックが2小節。これを変形する。

同じ進行の2小節が4.5小節、8.9小節にある。ブルースの場合、これも個性になるのだけれど、一般的に同じコードが2小節以上続く場合、「デット・スポット」(進行上、停滞した場所)として、リハモの対象とされることが多い。デッド・スポットという用語はイナモリ・メソッドからの引用なので、あまり一般的とは言えませんが、ターンアラウンドも大きく分けるとデッド・スポットに分類される。つまり、進行的に、待ち、受けの状態。

ターンアラウンドがトニック(I7)の場合。

I7 IV7 II7 V7 の循環コードの進行が基本になる

キーがCだと。C7 A7  D7  G7 (II7は IIm7としても良い)

では、実際に弾いてみる。最初の2小節が基本となるボイシング。次からが、そのフォームを使っての、バリエーションとなる。譜例通りに弾いてから、自分でリズムを変形してみてください。

@

トップの下降型。全て7度型、3度型の基本形。最後のG7が3声になっているのは、3度のBをトップとして、コードトーンに吸収した形。特に7thは、3度、7度がコードの個性となるので、3、7度がトップの場合は、部分的に3声、2声になるのは構わないし、4声の連続が響きを重くしてしまう場合の有効な対策になる。これはB章から説明します。

ディミニッシュ代理と、ランニング・ベース/コード前のページのディミニッシュの代理は、ルートの進行が半音で次のルートへ吸収される形が中心だった。けれど、ディミニッシュの連続も有効になる。この場合、Bbdimは、A7の代理。つまり、C7→C7代理のDim7th→A7の代理Dim7→A7という進行。

代理和音は、代理から元のコードへ戻る、行き来が出来る。あるいは、一つ遠回りをする形で、代理→もとのコードという進行も可能になる。代理和音の進行はこうしてパターンを増やし、自由にしていきます。


A

トップの上昇型。ルートの省略もトップの動きと、転回のために、有効。それぞれの転回がどの状態か理解してください。

B

最後の4小節は、B章の予習的なラインになると思います。ベース、コード、メロ。また、この場合の1拍裏のコードのトップも、メロディー。今まで、コード/メロディーは、「コードを出来るだけ持続、保持すること」が課題でしたが、特に弱拍や裏に入るコードは、スタッカート気味に弾くことで、かえって裏を打っていることが強調できる。こういったバリエーションも試すこと。最後の2小節目のA7のトップは、分散和音になっている点にも注目。B章では、コード・フォームを押さえていない状態での、単音、単声でのコードの分散フレーズを多用します。

C

各代理和音による、アプローチの連続。Ebm7→Dm7の連続は、ドミナントの代理ではなく、「アプローチ・コード」の「動き」を応用した平行的な動き。こういった応用も多用されます。機能(T、SD、Dのどれに還元出来るか)を考えると、なかなか理論付けが複雑になる。後述しますが、ここでは、「動きの応用」として考えてください。また、機能和音を使った進行の中で、こういった「アプローチ」で同一の型のコードが平行する事はパラレル・アプローチ・コード(平行の隣接和音進行)と呼びます。あるいは、ベースラインのページで紹介した、「導音」目的の音へ半音で吸収される、進行する音の、「束」と考えてもらうのがわかりやすいかもしれません。B章で詳しく。


A−5−B. 同種コードのオクターブ等分割の代理進行 あるいは、同型コードのオクターブ等分割音程の循環進行

5−Aで、ターン・アラウンド、デッドスポットは、「受け」、「待ち」の「コード進行的に静的」な部分だと理解した静的な部分だから逆に、リハモの自由度が高いと言うことが出来る。ターン・アラウンドの場合は、1コーラスの終了から、次のコーラスへの「つなぎ」「架け橋」的な役割のために、5−Aでは、I−VI−II−Vという、滑らかで、かつ進行感のある、いわゆる循環コードを用いた。

次に、もう一つのリハモの自由度の高さを行使する方法を紹介する。それが、同種コードのオクターブ等分割循環進行、あるいは、同種コードのオクターブ等分割の代理進行。

これは、T、SD、Dといった、機能和声の和音の範疇から出たコードの使い方で、3つの機能に還元出来ない、出来ない事も無いけれど、多分にこじつけっぽくなってしまう。だから、論理的な根拠、説明はなかなか難しい。

単純に定義すると

一つのコードを、同じ種類のまま、丸ごと12半音を等分割した音程で進行させ、元のコードへ戻る循環進行。

あるいは、12半音を等分割したルートの進行を循環しきらずに、次のコードへ進行すること。

発想としては、おそらく、同型のまま機能が変わらず、響きの性質も変わらず、同じ音程、つまり短3度づつ進行して、オクターブを一周する、ディミニッシュ7thの応用として発生、成立したものだろうと思う。

短3度は、3つの半音。で、オクターブ=12半音を3で割ると、4。4つの、ディミニッシュは、例えば、Cdim7→Ebdim7 →Gbdim7→Adim7→Cdim7 と進行して、オクターブを一周する。その間、コードの機能、響きの性格自体は変わらない。

この平行移動的な「循環」を、他の種類のコードにも応用するのが、オクターブ等分割の同型進行。

しかし、例えば、C7の、調3度による、オクターブ等分割の進行、C7→E7→G#7→C7 はそれぞれ、

C7     ド ミ ソ bシ 
E7     ミ ソ シ bレ 
G#7 #ソ ド レ ファ

構成音を見るとおり、この三つを同じコード、あるいは、代理しているコードとは到底いえない。しかし,

同じ種類のコードを、同じ音程づつ進行させて、一周させることで、「印象」としての、循環を利用する進行になる。

これは、ディミニッシュに代表される「動き」、「平行の同一性」とでも言えばいいのか、ともかく、「動きの利用」による進行。厳密に、代理進行と呼んでよいものかも、疑問になるけれど、循環させるなら、循環進行であることは間違いない。

少々こじつけ的にはなるけれど、ディミニッシュ7thを7thコードに還元(ディミニッシュは7thの代理だから)すれば、7thの短三度の循環は、ディミニッシュの進行が根本原理だと言えなくも無い。けれど、等音程の循環は、短3度に限らない。

もうひとつ、等分割の根拠と言えるのは、裏、つまり♭5thの進行になる。これは6半音のルート進行なので、12半音の2分割と言うことになる。しかし、裏代理に関しては、前述した通り、共通音による代理性の根拠がある。

機能和音、つまり、「T,S,Dそれぞれのコードの役割、Tは始まりと終わり、基本になる、落ち着き先のコード、SはTから進行しやすく、緩やかな変化、進行感、またDの準備、前置き的な役割。そして、DはTへの期待感を持たせる不安定さ、D→Tと配置すると、最も強い進行感、解決感がある。」この文法を用いることを、機能和声と言うわけだけれど、等分割は、その機能和声では説明しきれない、時代的にもかなり後に成立する考え方、使い方です。

近現代音楽では、5度圏(前述)を図に描いて、(時計を考えてください)対になる音、それぞれを結んで正方形や正三角形など、12を割り切れる数字でオクターブを分割する考えを組織化して用いる手法が提案され用いられている。ちょと・・・こういうのは、なんと言うか、このノートの趣旨から外れるので、音楽理論ノートに書きますね。

ともかく、12半音の、12という数が、2、3、4、6で割り切れると言う事を実用しているわけで、「理論的裏づけ」を難しく考えるより、実際使ってみる方が早いと思うよ。

ともかく、理屈はなかなか難しいけれど、弾けば納得できると思う。

ブルースの進行においては、7thコードが中心に、あるいは、7thコードが進行する。そこで、7thコードを同種等分割音程循環させることは、7thコードの、2ndly V7th、裏代理、アプローチ・コードの7thに続いて、もう一種類、7thの可能性を加えることになります。

@ C7の等分割 長3度(4半音)

まず、C7の等分割。これを弾くと、なぜブルース・進行のフォームに於いて、等分割進行を紹介しているか、理解してもらえると思う。

1小節目は、C7を、長三度上昇、短6度下降。それぞれ、トップ・ノートとフォームに注目。一小節目は、7度型→3度型の連続。同型を連続しない事によって、単に同じ形を数フレット平行移動する動きと違う、深い響きになる。(同型のフレットの平行移動も弾いてみて下さい。違いがよく解ると思う)

トップは、メジャーペンタの6度、5度、3度、そしてブルーノートの短三度。2小節目は、Bb7が、E7の裏。裏を使う事で、二度の進行が現れることに注目。G#7thにF(これは、C7のアヴォイドだけれど、この使い方は有効だと思う)それ以外は、1小節に同じく、ブルースのスケールをトップに持ってきている。3小節目以降は、逆の回転、つまり、転回して、短6度の下降。やはり、ボイシングの型の選択、連結とトップに注目。

これらを、実際のフォームの中で動かして、よりはっきり、響きの連結を確かめてみる。

Aターンアラウンドへの活用

3度上昇を、ターンアラウンドの前半1小節目に活用した例。C7→E7の動きが、トップとベースの反行(逆の動き、この場合、トップ:下降、ベース上昇)。G#7を、Dm7の2ndlyV7のA7へ、結果的にアプローチさせている

注目して欲しいのは、等分割の「循環進行」と呼んではいるけれど、前後関係、特に次のコードに対して、入りやすいコードを配置する事で、「循環の途中」でチェンジする事が可能になる。これは、「7thコードの代理和音」に加えての、もう一つの7thの使い方の代表例になる。つまり、この場合は、E7も、G#7も「あたかも」C7の代理のような扱いになる。

3小節目以降は、V7of IIm7を用いないで、そのまま、G#7からIIm7へ進行させている。この場合のルートの進行は、裏進行になるが、この根拠はもちろん裏というわけではない。

もし、等分割の発想がなく、こういう進行に、楽譜なり、演奏なりで出くわしたら、とても不思議に感じる、あるいは、どういう根拠か見当もつかない進行だと思う。けれど、弾いて見て、非常にブルースらしい響きをもたらしている事が納得してもらえると思う。

B上記の進行のコード/メロディー化


C次に、C7と同じく、ブルースの基本フォームにおいて、連続して(2小節変わらず)用いられる、IV7thの長三度等分割音程の循環。

これも、ルートが変わるだけでC7と全く同じ扱いをしている。

F7同種等音程進行を紹介したのは、同種等音程進行と、その循環を途中で切る進行の有効な箇所は、ターンアラウンドに限らないという事。

D

上記は、C7からF7への動き。また、F7からC7への動きのリハモ。E7が結果的にF7へのアプローチ。C#7が結果的にC7へのアプローチになっている事に注目。「結果的」なのだけれど、もちろん選択しているわけです。

E 等音程進行にII−Vをはさむ。

一つ目は、F7のフィールドでの、等分割進行に、C#7へのII−Vをはさんでみた。これも、先ずは弾いて欲しい。ソファミファ ミ ドレ ♭ミ〜という、単純なラインをトップにしているけれど、なかなか深い響きになるでしょう?つまり、リハモのリハモ、二段階のリハモということ。こういう進行も今後多用するようになる。二つ目は、10小節目のC7、つまり、続きは11小節目のDm7になる。ここも、ブルースの基本フォームでは、C7の2小節の連続。なので、後半1小節を、Dm7へのII−Vに取る事も可能だけれど、2小節使って、C7を分割進行しても良い。分割の順序は短6度下降。二つ目のG#7を、Dm7のVであるA7のアプローチとして使っている。

こういう使い方になると、「コルトレーン・チェンジの応用」の初歩になる。コルトレーン・チェンジというのは、そもそもは、一曲を、等間隔ルートのトニックへ転調で作り上げる事を言う。つまり、例えば、CM7、G#M7、EM7の三つのキーへ転調して、最終的にCM7に戻る。その間を、II−Vなどの進行でつなぐシステム。一般的な転調の使い方と違って、変化をもたせるというより、どれもトニックとして扱い、循環する構造があるので、マルチ・トニック・システムと呼ばれる。詳しくはコルトレーン・チェンジ・ノートを書く予定。で、本格的にコルトレーン・チェンジを応用すると、もっと広くT,SD,D部をとって、そのなかで等間隔のチェンジをする。

とりあえず、等分割進行に、長三度、短6度を紹介した。これは等分割のなかで、この進行が、特に7thを動かす際に、前後関係においても使用が容易で、そのコードのフィールド内での動きにおいても、細かすぎず大きすぎず使いやすいのが理由です。より細かな分割、また、より大きいフィールドでの分割は、B編で紹介します。

そして、A編で紹介した全ての実用的原理を用いた練習曲を紹介して、A編を終える予定です。

また、B編に移る前に、実習というか、自分でブルースのソロ・アドリブを作るための、シートを紹介します。これは、僕も実際に手書きのノートでやった方法なので、有効だと思う。ブルースのソロ演奏を五線に書くという意味ではくて(これも、とても有効です。いわゆる仕込み、というやつですね)、基本的な進行と、リハモの可能性を五線に最初はコードネームで書いて、アドリブする。

その際に、最初の2小節の動機をあらかじめ書いて、最初だけそれに従って、あとは動機自体、ブルース自体のもつ展開力、推進力を体験する、引き出す練習。

この、最初だけ書くというのは、アドリブ、即興の練習、習得にとても有効です。慣れてきたら、いわゆる「キメ」の部分を書いてもいい。

ちょっと高度な事のような印象があるかもしれないけれど、やってみると案外簡単で面白いと思います。

特に、アドリブを、コードを見ながら弾くというのは、コードの選択に意識が奪われてしまうという、アドリブのやり始めの時期の困難さを軽減します。今までの練習曲をほぼよどみなく弾ける人なら、問題なくやれるし、これは結構はまると思う。代理の可能性を並列して書き出すと、「あみだくじ」みたいに、一つの代理のラインから、別の代理のラインへ進んだりとか、可能性が、乗算されて行く。これをやると、ブルースのチェンジ一つでも、「ワンパターン」とか「ネタ切れ」なんて言葉が、たわごとに聞こえてくると思います。

また、今まではCのキーで、「理解」のために、基本フォームと代理を紹介してきましたが、B編からは、一つづつ使うキーを増やします。♯、♭が五線に一つづつ付く順序、Gのブルース、Fのブルースです。GとFは全音の関係なので、フォーム的にも理解に融通が利くでしょう。キーを換えることで、指板上での、それぞれのコード・フォームでのコード/スケール、コード/メロディーの射程、使い方をより深く把握することが出来ます。

つづく

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