ワン・グリップ・ブルース One grip Blues =1ポジションのコード・スケールによるブルースのアドリブ 最も容易な、ブルースのアドリブの習得法と、ソロ・ジャズ・ブルースへの発展の実用。

定義:ワン・グリップ・ブルースとは。


3つの主要和音、トニック、サブドミナント、ドミナントの7thコードを、最も近いポジションでつなぎ、コードのポジション内のスケールでアドリブをする方法。

コード→メロディー という順序で、最初はコードとメロディーを交互に、独立して扱う。

*拍の頭(前小節の末尾)でコードを鳴らし、コードの印象を持続して、スケールでアドリブをする。

ワン・グリップ・ブルース譜例

このまま弾く事は難しくないと思う。これは、アドリブでブルースのテーマ、メロディーを弾いたもの。この後に、このワンコーラスの印象を発展させて、アドリブをする。非常に単純だけれど、弾き方によっては、十二分にソロ演奏としても通用する。

ちなみにこの譜例では、スケールは、マイナー・ペンタトニックしか使っていない。この形式でのアドリブでの、「ブルースのメロディー」の作り方、アドリブの仕方を紹介する。

発展するにしたがって、スケールはマイナー・ペンタトニック・♭5、メジャー・ペンタトニックと、マイナー・ペンタトニックとの実用的混合としての、トニック・ドリア等のスケールを使い、また、コードトーンの分散などのフレージングへ進む。また、コードの種類を増やし、コードの連結をより深く、あるいは滑らかにする。

また、ワン・グリップでのブルースは、ブルースに限らず、コードとメロディーを絡める、同時的に扱う事の基本の一つとなります。


導入

動機とは何か。

メロディーとフレーズの違いについて。
先ず、メロディーとフレーズの違いについて理解する事。

多くの教本等々で、ブルース・ギターに関して紹介されるのは、「ギターのフレーズ」であり、器楽(楽器の都合上で有効な)フレーズです。

ブルースに限らず、「メロディー」と言う場合、楽器で奏でられる場合も、「歌」の事を言う。必ずしも、歌のメロディーを正確に弾く、模倣するものではないが、「歌える・歌いやすい」ものであること、つまり、単純でありながら、リズムと音程の法則性をもち、印象が強いものを「歌」と定義する。

歌は、「動機」という「メロディーの単位」で構成される。

例:チューリップの花の歌


この場合、最初のドレミの三音の動機が最初に提示、同一形で連続、ソミレドで展開、レミレで音程を変形して一つ目の四小節の単位を締めくくり、次への備えとしている。二段目の結尾は、トニックで一時的に終止(落ち着く)し、3段目は3小節目の動機を変形して、一気に自由に曲の終わりへ向かう。起承転結を、視覚的にも理解してください。


例:運命(交響曲第五番:ペートーベン作曲。原曲Cm)

この曲の場合、ウ・ミミミ|ドー|の動機を使いまわし、発展し、どんどん緊張感を高めている。動機は先へ進むほど、音程的にも、リズム的にも密になり、同時に拡大してゆく。

最小単位、主に第一小節で提示した動機を「繰り返す事」「発展させる事」「変形する事」それらを、また大きな単位で「繰り返す事」・・・
で、楽曲は構成される。
これを音楽形式=楽式と呼ぶ。ブルースの形式については後述。また、フレーズは、これらの「メロディー」を軸にして、飾ること、変形する事で作られる。


つまり、「動機」とは、リズムの単位の上で、音程の単位=音階から音を選択することと定義出来る。

そして、ブルースを弾くと、体で理解できることだけれど「動機」とは、それ自体で、発展してゆこうとする、また解決してゆこうとする生命力を持っている。

だから、ブルースがアドリブの初歩に取り上げられる事は、とても有効な事だと思う。何故かと言うと、

ブルースは、そのスケールの構造、コード進行とあいまって、非常に強い推進感、帰結感の動機をもっている(あるいは要求する)から。

そして、ブルースの形式は、それ自体で、動機が自ら発展する力に、道筋を与えているから。

つまり、「動機について知る」とは、動機の基本的な形を知り、その操作方法を知ると同時に、何より動機そのものの力、方向性を「感じる」こと。

その「感じ」に従うこと。その際に、繰り返しや、変形の可能性などの「意思」によって、動機に「手を添える」位の力関係で、充分にアドリブは進行する。

この「動機そのものの力」を経験すると、アドリブは、「手持ちのフレーズのつなぎ合わせ」ではなくなる。つまり、動機、音楽の形式と「その時の自分」との協働となる。

アドリブは、「スケールの上下」「アルペジオの変形」だけでは、無味乾燥で、手詰まりになっていく。「スケール練習的なフレーズ」にはなるが、特にブルースの旋法性また、「ブルースのメロディー」はスケール練習的なフレーズでは表現できない。それらは全く正反対のものなので。

*旋法=音階を用いた、メロディーとフレーズの法則。また、メロディーとフレーズの特徴。それらを用いた音楽。

つまり、ドレミファ・・・その他、音階を使うもので、旋法で無いものは無いのだけれど、西洋音楽との違いから特に、民俗音楽の五音階その他の音階の「歌い方」=メロディーとリズムの選び方・・・等々を「旋法」と呼ぶ。

ブルースの場合、コードは半分は西洋音楽。つまり、ドミナントだけでなく、トニック、サブ・ドミナントも7thに変形される。変形している音は、ブルースの持つ音階が根拠になっている。詳しくは後述。


1.ブルースの動機(メロディーの単位)とブルースの形式について。

ブルース(アコースティック、エレクトリックを含む)の歌(ボーカルのメロディー)は、語り、しゃべり的なリズム、イントネーションを持つので、そのままメロディー化する事は難しいけれど、その歌メロも、必ず軸となる動機を含んでいる。

基本的なブルースの動機は、四拍子での、3連の中抜きによる、スキップビート(タッタ タッタやタータ ね。)あるいは、8分の後ろの拍(裏)が若干遅れるリズム。

ブルースの動機を理解するには、弾くのが早い。

では、ブルースの動機、つまり、リズムと、音程=ブルースで使われる特徴的なスケールを、ギターで弾く事で理解する、また操作する方法を紹介する。


トニック7thコードと、マイナーペンタトニックスケールのポジション

マイナー・ペンタトニック・スケール

1・グリップで使用する、マイナー・ペンタトニック・スケールのポジション。構成音を理解する事。R・m3・4・5・7の五音階。


使用するコードは先ず、この主要三和音(スリー・コード)となる。

C7=トニック(T) F7=サブ・ドミナント(S) G7=ドミナント(D)

*これらは、いわゆるテンションコード。テンション(緊張)コードとは、ルート、3度、5度、7度に、コードの元になる音階(スケール)から、2度(9th)、6度(13th)また、その変化音を「加える」「重ねる」事を言う。

C713は、Cのミクソリディア(ドレミファソラ♭シド)の6度、ラを加えたコード。このラ音は、Cメジャー・ペンタトニックの性格をよく表現する、ドレミソラドの、ラ音でもある。このコードフォームの場合、5度(ソ)を省略している。ジャズ的な響き、ジャズ・ブルース的な響きのコードにおいて、5度の省略は常套手段となります。

F79の場合、Cブルーノート・スケール(後述)のブルー・ノート3度であり、同時にFミクソリディアの7度(E♭)を含む。

G7#9の#9(m3)のB♭も、同じくCブルーノートの7度。

つまり、これらのコードは、コード自体で、ブルースの特徴的なスケールの音、ブルースに特徴的な音を含んでいると理解してください。

全体的な形式としては、12小節ブルースで、

 T  | S  | T  | T  |

 S  | S  | T  | T  |

 S  |   D   | T  | T      |

などだが、後で詳しく。


トニック(T)と動機。マイナー・ペンタトニックスケールの場合。

ではまず、動機を動かすための、1グリップ・ブルースの基本となる、コードとスケールのポジション。全音符が、1グリップ(単一のポジションの)コード。C7、13。最初は、マイナー・ペンタトニックで動機を動かす。2分音符は、コード・トーンを表す

コードトーンは、進行するコードの「部分」つまり、トニック(以下T)、サブ・ドミナント(以下S)、ドミナント(以下D)それぞれの部分で、大きな音価(長く伸ばす)をもつ事が可能で、良好な音程となる。この譜例で表した、コードと音階を動かす方法は以下の譜例の通り。

8分音符は3連中抜き、あるいは、4分 8分と弾く事!

また、1小節づつの動機は、独立して紹介するもので、続けて弾いても意味は無い。かならず、一つづつの動機を弾いて響きを感じる事。


@

先ずは、コードを鳴らし、響きを感じる。そして、リズムは自由に@の場合、3音を動かしてみる。つづいて譜例を弾く。

4分音符のコード。続いて動機を、8分を主体に動かす事。これが、基本的なワン・グリップ・ブルースでの動機の形となる。

つまり、コードのトップを1拍目のメロディーと考えても良いし、4分休符で始まる動機と捉えても良い。いずれにせよ、動機を操作するための形なので、柔軟に変形しても良い。でも先ずは譜例通りに弾いてください。マイナー・ペンタトニックで動機の「音程」を構成する場合、長6度は、マイナー・ペンタトニックの構成音ではないので、コードのトップもメロディーとして扱う場合、実は、マイナー・ペンタトニックと、Cミクソリディアの「混合的な音階」を使用していることになる。(後述)

1拍目のコードのトップをメロディーとすると、ラからの動機となるが、コードが鳴っている間を、メロディーが休符になっていると捉えてもいい。

後述するが、休符も動機の操作に欠かせない重要な要素になる。

ド、♭ミ、ファの3音のうち、コードの構成音と重なるのはトニックのドのみ。しかし、♭ミも7thコードのテンション、♭13thとして、コードと同時に鳴らされても、響きを作る音として、大きな音価を持たせても差し支えない。それぞれの音を伸ばして、どういう響きになるか、「感じる」。

ファの場合は、C7に於いては、3度とぶつかるので長く伸ばす事は避けたい音。しかし、ブルースの「濁りの安定」の中では、7thでの4thも使い方によって有効になる。これも、まずは「感じる」こと。

@でのまず第一の特徴は、スケールのトニックが、動機の開始、終結に於いて、最も安定感があるということ。

使う音が何音であれ、2音以上は、音程が「上がる」か、「下がる」また、これを組み合わせれば、「上がって下がる」か、「下がって上がる」。組み合わせは、使う音が増えるほど複雑化するが、基本的なこの二つの要素は、変わりようが無い。音程の上下も以下の動機についても注目する事。


A

使う音を、1音増やしてみる。ド ♭ミ ファ ソ の4音。

この4音を使うと、ファの扱いの傾向がよりはっきりしてくる。つまり、Tでのファは、♭ミ、ソ、どちらかに吸収される。

また、ソは、コードの構成音として、長い音価が良好な音。5度は安定感が強い。

もうひとつ、ソは、1拍目のコードのトップ、ラと順次(隣の音)進行となる。この流れも、マイナー・ペンタトニックのみのメロディーより、雰囲気は多用になり、少々の明るさを含む。

しかし、コードのトップ・ノートもメロディーに参加させる方法は詳しく後述する

後半は3連も使う。後半へ行くにしたがって、動機の形が展開されていることに注目。3連の位置によっても、印象はかなり変わる。入れる場所は自由。これも「感じる」こと。


B

スケールを、7th(♭シ)まで延長、拡大した。♭シもコードの構成音。♭シは、全体的なブルースの形式の中での(つまり、ブルースの進行のアドリブのなかでは)傾向としてはトニックのドへ向かう。しかし、ここでは、伸ばした♭シの響きを確かめて欲しい。


C

スケールを1弦の♭ミまで延長する事で、ワン・グリップのブルースの最高音までを網羅する事になる。♭ミは既にオクターブ下では扱った音なので、基本的な傾向は変わらない。けれど、テンションの特徴上、音程は高い方が、伸ばしやすい。この響きオクターブ下の♭ミと比べても感じること。


以上、マイナー・ペンタトニックを使った、トニック部でのブルースの動機を紹介した。これらは、ワン・グリップ・ブルースの演奏の仕方の都合上、1拍目がコードという形になっているけれど、動機を動かす上での可能性は提示できたと思う。

トニックでマイナー・ペンタトニックの動機を動かしてみて、何を感じたろうか?

次へ進みたくならなかっただろうか?なったとしたら、それが動機の力、あるいは、ブルースの推進力を経験したという事。トニックから先へ進む場合、ブルースの基本フォームだと、サブ・ドミナントになる。以下の譜例は、トニックから、動機を引き継いで、全く同一の形で繰り返している。この「繰り返し」は動機操作の最も基本的なもの。

サブ・ドミナントでのCマイナー・ペンタトニックと動機の引継ぎ

F7、この場合、F7,9の構成音は、ファ ラ ド ♭ミ ソ 5度のドを省略する事で、4音和音としている。

同じ動機が、F7の中で「違う音程」になることに注目。つまり、C7の中ではファは、ソ、♭ミへ吸収される方が落ち着く音だったけれど、今度はF7のルートとして、とても安定した音になる。しかし、動機として、「音階」の順序で繰り返す場合、

ルートから始まって、マイナー・ペンタトニックの音を順番に上がって下がる動機。3小節目からの2小節の単位のC7で、今度は2小節目のF7の動機を使っている。青い枠の音は、ファから始まるメロディーに「経過的」つまり、つながりを持たせるために使っている音。最後のソは、C7でファが落ち着いた先ということになる。

C7の中でファに大きな音価を与えることは響きの濁りから、少々難しいのだけれど、こういう使い方はとても有効。つまり、緊張感の高い音から動機を始めて、大きな音価を与えられる、ルートやコード・トーンへ落ち着かせるという事。同一の動機を繰り返す場合と、比べてみて欲しい。

つまり、動機は、リズムの形、動機全体の音の高さの形、を動かす事でも操作できる。いずれにせよ、「落ち着く音」、つまり「コードの音」への重力を感じて弾く事。

そして、C7での動機で上に紹介したもののうち、Bbが大きな音価をもつ動機以外は、音程的にも全て全く同じ形で繰り返す事が出来る。

では、C7の動機@へ戻って、まずは、音程も同一の動機を、F7で弾く事で連続させること。

Bbは、F7の4度となるので、大きな音価は避けたい。(今のところ。)

つまり、コードの構成音には大きな音価を与える事が出来る(音を伸ばしても良い)ので、C7で表示した動機は、音程的には性格が変わってくる。しかし、ドは5度として、♭ミは7thとして、ソはコードに含まれる9thとして、いずれも長い音価を持たせることが出来る。

そして、ドは、依然マイナー・ペンタトニックのルートとして、強い帰結感、安定感を持っている。しかし、C7での響きと、異質になることが感じられると思う。

C7−F7で同じ動機を繰り返したら、今度はさらに、C7の連続へ進みたくなる欲求を感じるでしょう。今度は、多少自由に、最初の動機を拡大して弾いてみる。

それが慣れたら、二小節目のF7の動機にも上で挙げた、音階の順序としての音程の変形を与えてみてもいい。

しかし、ここで一番注目して欲しい、経験して欲しい事は、音程も同一の動機が、サブドミナント(に限らず、違うコードで)繰り返される事によって、メロディーそのものが変わらないのに、コードでの位置関係が変わることで響きが変わる、これが、ブルースに限らず、動機操作のひとつの「神秘」「極意」に属する事柄だと僕は思う。


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