A−2.ルートの省略と転回。

ルート省略のコードフォームの説明に入る前に、II-Vを使ったブルースの進行にトップノートを動かした(トップノートの違うフォームを弾く)ものを弾いてみよう。パワータブはこちら

トップノートを動かせる可能性は先にあげたダイアグラムを視覚的に参考にすること。

トップ・ノートのメロディー化(1:1)(コード:メロ)

   

前のページでやった、II-Vが入ったブルース進行のコード以外使っていない。ただ、コードのトップ・ノート(一番高い音)を動かして、メロディーにしている。このメロは、低い音域では、ブルースの基本的なバッキングでも使われる、トニック、サブドミナント、ドミナントのそれぞれ、5度、6度、7度を使ったもの。(そういえば、これ、正式な名称があるんでしょうか?)

リズムも若干動かしている。

で、4、8小節と、10、12小節でルートの省略のフォームを使っているので、先ず響きを確かめて欲しい。(6小節の一部も、リズムの結果でルートが省略されている)

4小節目の Gm7→C7の5度型ルート省略は、7度をトップにするために、また、Gm7からの流れで、ルートをGのまま保留して、音程は大きく動かさずに響を変化させる事を狙っている。

6小節目の一部は、リズムの都合上で、ルートが省略されている。リズムをベース(ルート)と分離する事で、リズムの変化だけでなく、結果的に響きが軽くなる。

8小節目は、7度型のルート省略。7度、3度の上に、♭13th、♭9thの二つのオルタード・テンション(半音変化させたテンション)をのせているフォーム。これも多用される。

こうして見渡してみると、結果的(ギター的)には、4声(4種類の音を重ねたコード)のコードフォームの、高音弦、2弦、特に1弦の音をトップ(あるいはメロディー)にとりたい時に、6弦、5弦の低音弦のルート、5度が省略されているのがわかると思う。

つまり、ひとつのコードフォームの中で、四声のうち、Rと5度が占めている2声(2種類の音)を高音側へ譲って、テンションやメロディーのために使うという事。 

これは、指板で見ると、縦(フレットと平行)のつまり、人差し指が固定された、コードフォームの中での動き。

ひとつのコードフォームで扱える、最高音、最低音を超えた音を扱いたい時に、今度は、横(弦と平行)の動き、シフトをする事になる。

では、ルートの省略と、トップノートの配置の法則と可能性を詳しく見てゆく。


転回とルートの省略

基本的な3つの7thコードのフォーム(音の配置)を発展させる。

コードのルート、5度を省略する事で、上方へコードの構成音を展開することが出来る。(ちなみに、コードの下の方の音を、オクターブ上へ移すことを「転回」と呼ぶ。)

ここでは、4声(4音)のコードのうち、ルート、5度のどちらか、あるいは両方を省略する事で、使える音、重ねる音を増やし、選択すると考えてください。

特に7thコードは、7度と3度の重なりがコードの個性を最も表現するので、この二音は保持したまま、別の音を加え、あるいは動かす

m7のルート省略は、m3上(m3から始まる)の三和音(R.3.5.)。フォームからもよく解ると思う。

特に、m79のルート省略は、(例:Dm79 レファラドミのレを省略、ファラドミ)は3度上のM7になる。フォームからも確認する事。

コードの基本形の順番は、ルート、3度、5度、7度、9度、11度、13度と、1音とばし、つまり3度づつ。なので、9度を付加する和音は、実は基本形は五和音(5つの音の和音)。

なので、五和音のルートを省略すると、3度からの4和音になる。これは、ダイアトニックの「代理和音」の基本的な関係にも見られる法則。

CMのキーで、

トニック: ドミソシレ=CM79 ミソシレ=Em7

ラドミソシ=Am79 ドミソシ=CM7

サブドミナント: レファラドミ=Dm79 ファラドミ=FM7

ドミナント: ソシレファラ=G79 シレファラ=Bm7♭5

これらはダイアトニックのメジャーのキーでの、基本的な代理和音の関係だけれど、和音を共通音で関連付ける習慣、コードの中に含まれる3和音を意識することは、単音のアドリブにもとても有効になる。 


トップノートのコードスケール化。コード/メロディーの基本。

実際にルート省略のコードでブルースの進行を動かす前に、予習も兼ねて、トップノートの可動を、楽譜で表現すると、以下の譜例になる。全音符は、コードフォーム。4分音符が、ブルースで使う、基本的なスケールと考えてください。

つまり、ブルースの進行の、コード・スケール(コード進行の上で使えるスケール、テンションに選択できる音の総称)となる。

赤で囲まれた4度は、 いわゆるアヴォイド・ノート(Avoid  note=避ける音)として、コードトーンと同時に鳴らす場合は長い音価(音の長さ)を与えない、つまり経過的(通り過ぎる音)として扱うのが良い音。理論的なことは、組織的(システマティック)に後述

今の所は、コードの、特にトップノートとしてメロディーを長く使う事は避けるべき音と考えてください。

まずは、音に出してみる事。感覚で、気持ち良い、悪い、長く伸ばしても意味ありげに響く、あるいは、隣の音へ、早く移りたい・・・などなど、自分で響きを感じてください。

「アヴォイド=避ける、避けよ」という言葉から、「使ってはいけない音」という誤解が結構あると思う。あるいは、「省略音」という説明もある。アヴォイドと言う言葉を辞書で引いて、「省略」って出てくるだろうか?

ともかく、メジャーの4thは、コードの機能つまり、メジャーのキーのトニック(I)サブドミナント(IV)ドミナント(V)の三つのコードが、それぞれ、別の機能に移る「ある1音」だと考えて欲しい。

m7th系では、m6、6度がアヴォイド。

では、上の楽譜を参考に、

トップノートのコードスケール化 を試してみる。

1.先ずコードを弾いて、コードの音を出来るだけ保持、持続(音を切らない)しながら、スケールの各音を弾く。(ブルース進行のコードの、コード・スケールになる)

2.1音づつ、コードと一緒に弾く。(トップが、コード・トンからテンション、付加音(とアヴォイド)に、交互になる)

3.ポジションと、指使いをつかんだら、フレーズにしたり、リズムをつけて遊んでみる。(ブルース進行の、コード/メロディーになる)。その際、コード・フォームをアルペジオ(分散させて弾いても良い。つまり、トップだけでなく、コードもメロディーに加えるつもりで弾いてみる。そうすると、コーダル:コードを表現するフレーズになる。)

1.2.3.は、実は、コード・メロディーの基本、あるいは核、内容そのものといえる。

コード/メロディーというのは、「和音とメロディーとベースラインを同時平行的に、リズムの中で動かす」という事。要するに、ソロに限らないけれど、楽器一つで充分な「曲」の表現をする方法。

簡単に言うと、ピアノだと左手が受け持つコードとコード・リズムを、ギターの場合一つの指板の上で左で押さえ、右で弾き分ける。

「コードを鳴らして、その響きの中で、スケールを動かす」というのは、作曲にも活かせる方法だし、コード進行を表現するアドリブや、複雑な進行でのアドリブを仕込む方法にも欠かせない。

*注:テンション:2=9 ♭2=♭9 m3=#9 #4=#11th


ルート省略の7thコードの使用

では、実際にルートを省略した7thコードを使って、ブルースのボイシングを進行させる。トップ・ノートはメロディーとして扱っている7度型、3度型の各7thコードルートが省略され、トップが一弦に展開している形と動きをつかんでください

部分的にコード:メロが1:2になっているところは、コード・フォームを保持(コード・トーン=コードの音を持続)して弾くこと。

12小節単位が進むごとに、リズムが多少込み合って来る。小節線をまたぐタイや、強拍(1拍目、3拍目)の休符など、リズムを読む練習にもなるので、じっくり読んでください。パワータブはこちら

解説。

全体的にコード・メロディーが、1:1、もしくは1:2で、ところどころで、「コード→単音のメロディー」。

トップノートをメロディーとして扱うために、同じコードのフォームが変わる(転回する)、コードの位置全体も変わる(シフトする:ルートのある弦が変わる。あるいは、3度型から5度、7度型に変わる)ということをつかんでください。

1.トップノートの動きのために、同一のコードが転回する条件

A. 楽器、手の都合

コードフォームを保持(コードの音を持続して)して、1弦、2弦に指が届かない場合、シフトする。ルート省略型の、トップの可動音より、高い、低い音をメロディーにしたい場合。(ダイアグラムを参照)

B. 響きの選択 

1.4声を重複(オクターブで同じ音)をコードに含ませないいため。

2.響きの全体の高低(響きの内容、つまり、マイナー、メジャーは当然変わらないけれど、配置によって、印象はかなり変わる)ルートを弾く、省略するという選択。

3.ギターで言うと、トップが一弦で、コードが6、5,4弦など、トップとコードの下三声(コードの下からの3種類のコードトーン)が離れすぎるのフォームはバランスを欠いた響きになる。

基本的に、今の時点で考えて欲しいボイシング(配置)は、7度型の時は低音弦のルートと7度が一弦とばして配置(6弦ルート、4弦7度;5弦ルート、3弦7度)。後のコードトーンは隣の弦にあるのが望ましいと考えてください。

つまり、最高音と次に高いコードトーンは隣りの弦が基本(コードとリズムを絡める場合はこの限りではない)なので、4声でコードを作るときに、1弦がトップの場合は当然、ルート省略や、ルートが5弦、4弦のフォームになることが多い。

4音が4声(4種類の音)の最小単位なので、最小単位で最大限、響きを出そうとするなら、重複によって、実質3声になってしまうことは、望ましくない。前後関係によっては重複させるけれど、特にメロディーとコードが1:1の場合には、重複させない方が響きが出る。

例:1小節3拍目、トップが7th。ルート省略型も、3度、7度は省略しないので、トップが3度、7度の時は、5度低音、あるいは、基本形(ルートを省略しないフォーム)を選ぶ。1.2.をコードの前後関係、連結の選択のために使う。

C. リズムの選択

コードをコンピング(コードでリズムを打つこと)として使うために、メロディーと分離した、あるいは協働した強調点として使う。


トップのためにコードを転回させるには、コードのフォームを把握しておくこと。楽譜で表現すると、以下の譜例になる。単純にトップを音階的に扱って、フォーム、ポジションを把握する。

転回、同一コードのフォームチェンジ=シフトの例

楽譜、五線が読める人、また読譜に意欲のある人は

五線が読める人は、出来る限りそちらに注目してください。タブ譜はポジションと形はわわかりやすいけれど、一度指板の視覚的な情報へ変換してからでないと、理解しずらい。けれど、五線の情報は、音名、音程の関係が一瞬にして見て取れる。下から固定ドで読むこと。基本形(例:ドミソシ)が、どう転回、配置されて変化しているか(例:ドシミラ、ソドミシ・・・)を読んでつかんでください。

で、それに慣れると、コードの構成音が「単語」になる。つまり、C7の別の言い方になる。で、ドミソシもドシミラも、シミラレも、C7の「ちょっと別の言い方」として瞬時に意識出来るようになる。

コードの初見が難しいとよく聞くけれど、それは大抵、単語化していないのが原因だと思う。

知らない外国語や、知らない単語ばかりの日本語を読むのが難しいのは当たり前の事で、言っている内容は単純でも、つまり楽譜の表している演奏内容がたいして難しくないものでも、単語を知らなければ読めない。

コードを単語化すると、分散和音や、それを2度でつないだアドリブなども意味がつかみやすくなる。

上記の事は、読譜と運指のノートで詳しく書く予定。

転回、あるいは同一のコードのフォームの移動、チェンジは、メロディー・コードが1:1で、厚く響きを出すことが出来る。ある程度テンポやチェンジが速い場合は、構成音がオクターブで重複しても構わない。

7thコードの4度の扱いは、コードスケールの場合に順ずる。


ここで、ちょっと、

動機(どうき、モチーフ)について。

動機操作に関しては、後で詳しく述べるけれど、少し触れておく。

動機とは、メロディーの単位の事。

上の楽譜では、一小節目から、リズムが、|4分 4分 4分 4分|4分 8分 付点4分 4分休符|(|ター ター ター ター|ター タッタァー ウン|って事ね)

メロディーの音高も、|ドー レー ♭ミー レー|ドー レッドォー ウン|ってなってる。

コードが進行しても、同じ音を使う事も出来るし、そのコードでの度数(ルートからの)で同じメロディーを歌う事も出来る。

これらの「音の高低の形とリズム」を単位にして、しつこく何度も繰り返され、変形されているのがわかると思う。楽譜を見るとそれが視覚的に把握できる繰り返しがしつこく、飽きるくらいのところで、変形、主に、繰り返されたメロディーが、細かければ、大きく、大きいリズムは細かく変化する。これを意図的に操作するのが、動機操作

あるいは、全く同じメロディーを「突っ込」んだり、「タメ」る事でリズムの強調点が、がらりと変わる。これもドライブ(?意味不明だけど、なんとなく解るでしょ?)する。

ブルースのギタリストって、手持ちのフレーズがそんなに多くも無いのに、むしろ、少ないフレーズ弾き倒して、楽譜で見るとやけに難しそうなリズムに見えたりとかするけど、聴いていると凄くドライブするでしょう。

で、ブルースは、呼びかけて、答える、というのが2小節単位で繰り返され、後半は合唱になるという「うた」の形式を持っている。もともと民謡なわけで、難しく考えなくても、なぜか、それに従うと、ブルースのどっしりと、ぐいぐい進む進行感が出るんだよね。

動機とブルースの形式に関しては詳しく書きます。とりあえず、「同じリズム、あるいは同じメロディーを、進行するコードの上で繰り返し、変形させる」のが動機操作だという事をなんとなくでも、つかんでください。

ちなみに、作曲、編曲法は、大きく分けると、和声(音階と和声)、対位法(旋法性と和声)、楽式(形式・リズム、動機とその操作を含む)となる。

で、ジャズ系ロック系に限らず、ポピュラーの教本って、どうも動機についての記述が弱いと思うんだよね。特に「アドリブ」には一番必要な要素だと思うんだけど。「どのコードでどのスケールが使える」ってのは、確かに文法かもしれないけど、フレーズ・メロディーと、それの動かし方、を持っていないと、「物知り」か「口真似、物まね」にしかならないと思う。手持ちのフレーズを切り取り貼り付けしても、アドリブや作曲にはなるけれど、リアルタイムで、「動かす」のが音楽の面白さだと僕は思う。

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